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対人地雷全面禁止条約第2回締約国会議(SMSP)報告

 9月11日〜15日の5日間、ジュネーブで「対人地雷の使用、貯蔵、生産及ぴ移譲の禁止並びに廃棄に関する条約」(禁止条約)の第2回締約国会議が開催された。

 これは、2004年に予定される「再検討会議」まで、国連事務総長により年に1度召集されるもので、日本を含む締約国62ヵ国が正式参加。未締約国48ヵ国、lCBL(地雷禁止国際キャンペーン)や国連機関など17組織がオブザーバー参加し、総勢665名が禁止条約のより良い実施を目指し、その適用・実施に関する問題点の討議を行った。

 難民を助ける会(AAR)は、lCBL調整委員として長有紀枝、地雷廃絶日本キャンペーンからは代表の北川泰弘がこの会議に参加した。


概要

締約国会議(SMSP)の概要を、会議後に発表されたFINAL REPORT(案)(資料4.1)およびICBLが発表した文書(資料5.1-5.8)をもとに整理すると以下の如くである。

2.1 期日:2000年9月11日(月)−15日(金)
2.2 場所:ジュネーブ国連会議場
2.3 参加者数665名
2.4 締約国:62ヶ国(欠席:32ヶ国)
2.5 オブザーバー(会議直則の9月8日に批准したが欠席のガボンとモルドバを含む)
 批准したが未発効国:7ヶ国(欠席:6ヶ国)
 調印したが未批准国:16ヶ国(欠席:16ヶ国)
 未調印だが出席の国:25ヶ国(欠席:29ヶ国)
 オブザーバー団体:8団体(ICBLの61ヶ国から163人、国際赤十字他)
 招待団体:9団体(人道的地雷除去の為のジュネーブ国際センター他)

・日本政府から在ジュネーブの軍縮会議日本政府代表部の登 誠一郎大使ほか6名と、日本から外務省軍備管理軍縮課の小玉邦夫氏および通商産業省航空機武器宇宙産業課の川俣裕行氏が出席した。

・オブザーバーとして東アジアから出席したlCBLおよび国連関連の主な人たちは下記である。
北川泰弘(JCBL)、長有紀枝(難民を助ける会、1CBL Coordination Committee)、John H. Kim(LMリサーチャー、北朝鮮)、Encore Pai(台湾)、Chan Wai-fong(0xfam-香港)、Tunga1ag Johnstone(LMリサチャー、モンゴル)、Miriam C. Ferrer(フィリピン・キャンペーン)、池田あき子(国連本部平和維持部地雷対策課犠牲者支援官)。


経緯

 締約国会議は、オタワ条約の第11条第1項、第2項に基づいて、条約の適用または実施についての問題を検討するため、毎年国連事務総長により招集される。1999年3月1日の条約発効後の同年5月に第1回締約国会議がモザンビークの首都マブートで開かれたのに続き、第2回が去る9月11日から15日にかけてスイスのジュネーブで開催された。この会議の席上でのニカラグア政府の提案により、第3回締約国会議は2001年9月18日から21日までの期間、ニカラグア国のマナグアで開催する事に決定した。

註:資料4.1及び資料5.1-5.8はJCBL事務局にあります。


地雷問題解決は地道な努力の積み重ね

ICBL調整委員会委員
難民を助ける会(AAR)東京事務局次長
長(おさ)有紀枝

◆ 未署名国の半数近くが参加

 オブザーバーとして参加した48ヵ国の中には、既に批准・受諾しているが、発効前の国や、署名したものの批准していない国とともに、未署名の 25ヵ国(アフガニスタン、ベラルーシ、中国等)が含まれている。

 全締約国の参加がなかったことは大変残念であるが、他方未署名の55ヵ国の内半数近い25ヵ国が参加したことは、禁止条約が、未署名国の中でも無視できない一つの国際規範になりつつことを示していると言えるだろう。

◆ Every Minute Counts(1分1分が重要)

 本会議のテーマは「Every Minute Counts-1分1分が重要」。世界では、今日でも20分に1人の割合で対人地雷の被害者が生まれている。除去を進め、新たな被害者をくい止めるとともに新たな埋設を防ぐには、この会議場での1分1分が重要である。会場となった国連欧州本部の前には、これを象徴するように、20分で1周する巨大な砂時計が据え付けられ、会議のシンボルともなった。

◆ 実り多き5日間

 11日の午後から15日の午前にかけて、以下のとおり8回の本会議セッションが開催された。

・ 第1〜第3本会議(11〜12日) : 開会式及び各国の意見交換

・ 第4本会議(13日) : 条約の適用または実施状況について検討。会議時点で107カ国が批准・22カ国が貯蔵地雷の破壊を終了、23ヵ国が廃棄中、地雷間題解決のために、ドナー国より約束された拠出金が2億5千万ドルにのぼり、」着実に地雷除去や被害者支援の努力がなされている点等が報告された。

・ 第5本会議(13日) : 条約第5条で義務づけられている10年以内の埋設地雷の廃棄に関し、どの国からも廃棄期間の延長要請が無かった点、同8条で認められている締約国から他の締約国の順守状況・問題に関する説明要請が無かった点が確認された。同時に、第7条で定められる条約遵守の透明性に関する報告書の書式の見直し、修正等が行われた。

・ 第5〜7本会議(13〜14日) : 第6条に関する国際的な協力及び援助について、地雷除去、犠牲者の支援、社会経済的復帰と地雷回避教育、貯蔵地雷の破壊、除去技術の開発それぞれの常設専門家委員会が事前に提出した報告書の検討・討議が行われた。

・ 第8本会議(15日) : つの常設委員会:((1)犠牲者支援、社会・経済的復帰および地雷回避教育、(2)除去、(3)貯蔵地雷の破壊、(4)条約の一般原則並びに運用、(5)除去技術でそれぞれ作成された報告書を採択し、議長は締約国に対し各委員会の勧告を早急に実施することを要請した。また、宣言と議長行動計画が採択され、5日間の会議は幕を閉じた。

◆ 日本は犠牲者支援委員会の共同議長に

 第3回締約国会議は2001年9月18〜21日、ニカラグアの首都マナグアでの開催が決定した。この間、 12月4〜8日、2001年5月7日〜11日に、上記の常設委員会が開催され、我が国はニカラグアとともに犠牲者支援委員会の共同委員長に選出された。

◆ 様々なレベルの協力関係を確認・強化

 内戦が続くアンゴラやブルンジ、スーダンでは署名国でありながらも地雷の使用が続いている。署名国の条約違反は、条約の普遍化とともに、この条約の根幹を揺るがす深刻な問題でありながら、本会議で罰則措置の検討にはいたらなかった。たとえ罰則措置を科したとしても、その影響を最も受けるのは、政府・反政府軍ではなく、地雷原で暮らす一般市民であろうことを考えれば、即断できる問題ではないが、それ故に、条約違犯は今後も大きな課題である。

 昨年5月モザンビークで開催された第1回締約国会議に続き出席させて頂いたが、この年次会議は、会議そのものを契機に、地雷問題が解決に向けて大きく前進した、というものではない。地雷をなくす努力は、長年にわたる地道な努力の積み重ねでしかありえず、また、地雷問題の解決をみる場所は、会議場ではなく、地雷が埋められ、被害者が暮らす地雷原そのものであるからだ。

 しかし、締約国会議は、そうした現場での活動、努力を最大隈に生かすために、地雷のない世界に向けたドナー (資金援助)国と地雷埋設国政府、埋設国同士、ドナー国間、そしてこの運動を推し進め、実際に現場で活動する市民社会と各国政府など、様々なレベルの協力関係を強化し、確認しあう大変重要な場であったと言える。

 我が国は、ニカラグアとともに、第3回締約国会議に向けた中間作業において、犠牲者支援委員会の共同議長に選出された。被害者支援を通じ、埋設国の障害者、弱者全体の底上げができるような事業の実施を目指し、日本政府とさらなる連携をはかってまいりたい。